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 〜サービス業から得る看護のヒント〜
第7回 POP
西井拓也 ⁄ 精神科看護 2006年10月号掲載
POPは物品販売だけのものではありません。
たとえば仕事場にある“注意書き”はPOPの感覚で書くことができます。
注意書きの定番は「節電!」とか「走らない!」という“禁止もの”です。

「節電!」を「使わないときは消してネ」という書き方にかえてしまうと効果が違ってきます。
力タカナの「ネ」を入れてお願いするのがポイントです。
禁止されるよりもお願いされるほうが,人は行動してくれるのです。

本当に節電をしたいなら,こんなやり方があります。
一番無駄遣いしているスタッフに「お前は字がうまいから,節電の注意書きを書いてくれ」と頼むのです。
あるいは「キミはイラストが上手だから,みんなが協力してくれそうな注意書きを書いて」と頼むのです。

字がうまいとほめられて嫌な気持ちになる人はいませんし,自分で書いた注意書きですから,その人が一番節電に貢献するようになります。まわりの人も上からの命令に従うよりも同僚が書いた注意書きに,協力してやろうという気持ちになります。

ひとつ,上手な例を紹介します。
海外の航空会社が,トイレの清掃費用を節約するためにとった施策があります。
それは,男性用の小便器の内側に本物と間違うくらいのハエの絵を描いたのです。

男性は,オシッコの飛び跳ねに無頓着なので,公衆トイレは汚れやすいのです。
市役所のトイレなどには,「一歩前に」という張り紙がはってあったりします。

でも,その航空会社はオシッコでそのハエを狙うようにコント口ールして用を足してもらおうと考えて飛び跳ね減少をねらったのです。結果として,トイレの清掃費を大幅に節約することができたそうです。

私の住む東京都板橋区でも,面白い例があります。
公園などにはよく「犬の糞は飼い主が責任をもって持ち帰りましょう」という注意書きがありますが,その注意書きには「飼い主には,スコップやビニール袋を持たせて散歩させましょう」と書いてあるのです。

これは,人間ではなくて犬に向けたメッセージです。
「人間にはいくらいってもだめだから,犬にいいます」といってるみたいで面白い。
こう書かれると,飼い主はマナーを守らなければという気持ちになります。

「ハトに餌をあげないでください」という張り紙は言葉が足りません。
ハトは餌をあげればその分,繁殖する鳥です。
餌が減れば自然に繁殖量は減少するのです。
結果としてハトの糞による被害が減少するので「餌をあげないでください」と書くのですが,

言葉が足りないので,餌をあげる人は「いままであげていたのに,
ハトがかわいそうじゃないか」と考えます。
張り紙に言葉が足りないのは「ハトの糞で迷惑している」という気持ちしかないからです。

ハトの気持ちや,餌をあげるのが楽しみになっている人の気持ち,ハトを愛している人の気持ちになってみると,効果のある注意書きができるようになるのです。

POPも注意書きも,相手に行動を促すためのものですが,ただ書くだけでは,遊び心がありません。ただ禁止しているだけでは,相手も素直に従ってはくれません。
どういうメッセージが人の心を動かすのかを考えるときに必要なのが,サービス精神なのです。
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